この記事は
「あの~東大の問題で、He says that that…とやたらにthatが続く問題があったじゃないですか?あれって先生のブログの記事を駆使するとすべて説明できるものなのですか?なんかこの問題、よくわからなくなるんですが…」
と悩んでいる英語学習者に向けて書いた記事になります。
● みなさんこんにちは、まこちょです。
東大の英語問題は本当に良問ぞろいで、本当に解いてて楽しい問題が多くて有名ですね。
私なんかもよく塾の生徒に、受験時期の秋以降入試過去問を使って演習をする場合、自分の志望校の過去問以外に東大の問題を勧めることがあります。
そのくらいよく練れている問題が多く、英語学習者にとって勉強になる英語問題を出すんですね。
今回ある生徒が持ってきた問題もそう、あまりにも有名でよくクイズ番組なんかにも使われたりするユーモアたっぷりな東大問題がこれです。通称東大英語の「that that that問題」と言われているやつです。
例
He says that that ”that” that that boy said is not that wrong.
ん?この問題は生徒が持ってきた問題をそのまま掲載しているのですが、なんかオリジナルとちょっと違うような…というかthatが増えてない?これ。
どうも学校の先生が東大の【伝説の問題】として授業中に紹介したらしいですね。若干アレンジが加えられているのかもしれません。
で、この問題を授業中に解いたらしいんですが、その生徒いわく「さっぱりわからん」と。
確かにこの問題は英語学習で習うthatの用法が大集合といった感じで、これがすんなり解けるようならあなたのこれまでのthat人生(?)は完璧といってよいでしょう。
その生徒はとても悔しかったらしく、一体この文の構造はどうなっているのかを教えてほしいというんですね。
そこで今回は改めてこの伝説の東大問題を、論理的に完全制覇できるかどうか解説します。この記事を読むと以下の点であなたの英語力は向上します。
▶ 改めてこれを試験問題で出した東大のユーモアさと伝えたいことがわかる
ぜひ今後の英語学習にお役立てください。
これが東大の英文で使われたthatの用法のすべてです
この東大の問題を英文解釈をしているかのように解説してみます。意外といいトレーニングになりますよ。
①動詞の後ろで使われたthat
まずは最初のthatなのですが、動詞saysの後ろで使われていますよね。しかもそのあともかなり長い文章で後に続くわけです。
当ブログでは、「動詞の後に続くthatは【接続詞】のthatを疑う」と解説しています。特に動詞が「思う・言う・示す」の意味の場合、後ろに続くthatは接続詞を疑ってかかるのが英文解釈じょうのセオリーです。
S+V+that節について具体的に学習したい方は以下の記事をのぞいてみてください。きっとあなたの英文解釈力に役立つことでしょう。
つまりここまでで
He says [that ~]
「彼は~と言う」
となっていると捉えられれば、まずは第一関門突破ですね。
②接続詞のthatの後ろはS+Vの文が続く
ところで、saysの後ろのthatを「接続詞」と考えた以上、接続詞の後ろは自動的に形が決まっているはずですね。
そう、接続詞の後ろはS+V、つまり文が来るのでした。したがってこうなっているはずです。
He says that S+V…
つまり、この後ろは何とかしてS+Vの文を作らなければならないと思いながら解釈していくとよいでしょう。
③動詞の数と接続詞(関係詞)の数の関係を利用する
とはいってもsays thatの後ろの形がこれですからねぇ…ここからS+Vの文を見つけろと言われても少々手ごわそうですよね。
ちなみに、わたしはこういう時に一体何するのかというと、この英文の動詞と接続詞の数は一体どうなっているのかを確認します。
つまり英文を作る法則として非常に便利な以下のルールを使います。それは
こんなルールが英文にはあるんですね。これを東大問題に当てはめてみます。
この文の動詞の数は計3つ。
He says that that ”that” that that boy said is not that wrong.
ということは接続詞・関係詞が2つあるということですよね。そのうち、saysの後ろのthat(青いthatね)は「接続詞」として考えているから、残り1つがthat以下にあるというわけですね。
ちなみにこの「動詞の数ー1=接続詞(関係詞)の数」のルールについてどっぷりと学習したい方はお手数ですが以下の記事を確認してみてください。
⇒ この箇所のどこかに関係詞か接続詞がある
そしてさらにこんなことを考えます。
英語の節(接続詞節・関係詞節)というのは、「1つの節に1つの動詞」が基本です。
ですから通常、接続詞や関係詞を英文中で使う場合は、以下の形になるのが普通です。
② V … [【接・関】 … V… ]
例①のパターン
What he said was wrong
「彼が言ったことは、間違いだった」
例②のパターン
I don’t know what he said.
「彼が言ったことを知らない」
ということは…?
そう、この文はsaidとisと動詞が連続していますから、①のパターンの形、つまりsaidの前のどこかに関係詞・接続詞があり、しかもその節はisの前で区切られていることが分かるわけです。
… [that ”that” that that boy said ] is not that wrong.
⇒この黄色の箇所のどこかに「関係詞・接続詞」がある
…なんか推理小説チックな展開で今回はお届けしていますが、今回の記事テーマが「論理的」ですから何ら問題なし!です(笑)
しかし、東大を合格した人はこんな風に、しかも制限時間ありでクリアしてるんだもんね..すげえなぁ。
④ boyは可算名詞
先ほどの黄色い部分をクリアすると相当楽になれそうなので、ちょっと細かく探ってみます。
すると明らかにこれは…という箇所があるのに気付いたでしょうか。そう、それはboyの前のthatです。
なぜこのthatが分かりやすいのかといいますと、boyは可算名詞です。
ですから、もしboyの手前のthatが「接続詞・関係詞」のthatだとしたら、boyは「無冠詞+単数形」で使われていることになりますよね。
ですが、可算名詞であるboyは
a boy
the boy
boys
this(that) boy
などの形で使わなければならないのです。むき出しのままでboyを使ってはいけませんね。
したがってこの赤いthatはthat boyで「あの(その)少年」でしょうね。that boyがsaidの主語として使われているようです。
⑤ saidは他動詞
この問題で「東大って茶目っ気たっぷりだなぁ」と思わず考えてしまうのがこの箇所です。
よりによって主節と同じ動詞をここでも使ってくるとはね。
さきほど、今回のこの一連の考えはsaysの後ろのthatを「接続詞」として考えることからスタートしましたよね。
ということはこの文、S says [that~]でthat節を目的語(O)としてとらえていると言っているようなものですよね。
つまりsaysは「他動詞」として使われているということを暗に認めちゃっていることになります。
にもかかわらず、後半のsaidの後ろに目的語(O)がない、と考えられた人がこの問題もクリアするんでしょうね。
ね?東大がただ「面白いから」といった理由で、この問題を入試問題として投入しているわけではないということがよく分りますよね。ケレン味たっぷりです。
このように本来、後ろに目的語(名詞)が必要な動詞を使っているのに、名詞がない状況を「不完全な文」といいます。
もちろん理由があって、関係代名詞の先行詞として前に行ってしまっているからなんですね。
→「あの少年が言った”that”」
そう、that boyの前のthat(青いthatね)が関係代名詞のthatで、 ”that”が先行詞だったんですね。
ここまでの攻防はこの問題の一番熱いところで、さりげなく「自動詞・他動詞」の知識や「完全な文・不完全な文」などの、受験生なら知ってないとね、と言わんばかりの文法用語を盛り込んでいます。
もちろんこの辺は当ブログでもこれまで熱い議論(?)がされてきました。以下の記事を後で確認していただければ幸いです。
そしてもちろん関係代名詞のthatと接続詞のthatの違いもさりげなく聞いてきています。この辺は英語学習者の踏ん張りどころといったところでしょうか。
⑦ 最大の難所!?”that”の前のthatは訳さなくていい!?
“that”の前にあるthatなのですが、このthatは正直悩みました。
「え?『あの』と訳せばいいんじゃないの?」と思う方もいるかと思うのですが、実はこれについては結構な論争が起きています(大袈裟ですが)。
※ここからは私の考えですのでそのつもりで聞いてください。
なぜ「あの”that”」という訳し方に今一つ納得がいかないのかというと、この”that”は先行詞であり、後ろから関係代名詞節でこの”that”の説明を入れているんです。
関係詞節というのは別名「説明節」と言われるほど、先行詞の情報があまりにも足りないときに後ろから修飾してその不足部分を補うために使うんです。
それを「あの“that”」などと特定できるほどなのに、後ろから関係詞節をかけるものだろうかという考えが私の中にあるんですね。
ちょっと気になったのでこの点に関して東大側の解答をみると(あの)”that”となっている場合が多いのですがちょっとしっくりしてません。何度も言いますがあくまでも私の考えです。
じゃあ、お前はこのthatをどう解釈するつもりなのか?と問われたら、一応「私の考え」という点を念押しして、以下の説明をします。
ズバリこのthatは訳さないです。
そんなばかな!と思った方もいると思いますが実はthatには訳が存在しない使い方があります。
そう、それが予告のtheの仲間のthat。
おもにthose / theで使うことが多いのですが、実はthatもあるんです。
先行詞の前にthoseやtheをつけて、今から後ろの名詞に対して、後ろから説明を入れるよ、と教えてくれる用法があるんです。その時は、このthoseやthe / thatは訳しません。
例
The boy running over there is Bob.
「向こうで走っている少年はボブだ」
→「その少年」と訳さない
例
Those who believe shall be saved.
「信じる者は救われる」
→ 「それらの人々」とは訳さない
したがってここは「あの少年が言った”that”」と訳せば十分なんじゃないか、と私は考えています。もしこれについて詳しい考察を持っている方は、本当にお話を聞きたいのでコメント待っています(笑)
ちなみに「予告」のthe / that / thoseの表現については以下の記事が詳しいです。ぜひ後で立ち寄ってみてくださいね。
⑧ veryと同じ使い方をする副詞のthat
最後はこのthatを紹介しましょう。このthatは「副詞」のthatで後ろのwrongを修飾しています。こんなthatもあるんですね。
意味はveryと一緒で「それほど」「そこまで」「そんなに」と訳すとよいでしょう。ここでは「それほど間違っていない」です。
例
It’s not that bad.
「そんなにまずくないよね」
さて全訳は以下になります。
訳:「あの少年が言った(あの)thatはそれほど間違っていないと彼は言う」
あとがき
さて、今回はいかがでしたでしょうか。改めてこの東大の問題を解説してみましたが、終わってみれば見事なまでにthat尽くしでしたね(笑)
解説の途中にも触れましたが、もちろん東大はこういった問題を「面白いでしょ?」というノリで出題しているわけではありません。
むしろ昨今にはびこるコミュニケーション重視の英語教育に警笛を鳴らすアンチテーゼ的なにおいをこの問題から感じますね。何かを感じていただければ幸いです。
ぜひ今後の英語学習にお役立てくださいませ。
また、会いましょう。
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