この記事は
「英文解体新書という本について具体的に知りたい!」
と思っている英語学習者に向けて記事を書いています。
●こんにちは、まこちょです。
本日は当ブログではめったにやらない書籍についてのレビューを書きたいと考えています。というのも久々にちょっと語りたくなった「英語書籍」が出てきたものですから。
そう、それは「英文解体新書」という本です。
いや、久々に骨太の英文解釈書が登場しましたね。もちろんこれまでも要所要所で英文解釈指南書は登場していますけど、なぜかこの新書には当初から目をつけていました。
もちろん発売と同時に購入し、まるで受験生のころの新たな参考書を手に取ったときに感じるあのワクワク感を感じながら、一心不乱に取り組み始めました。いや、本当に久しぶりなんですよね、この感覚。
そこで今回はこの「英文解体新書」を実際にやりこんでみた感想と、この本を手に取った英語学習者が改めて気をつけるべき「学習姿勢」を徹底的に記事にしたいと思います。
ぜひ今後の英語学習者にお役立ていただければ幸いです。なお、以下の記事内容はあくまでも私の視点から述べた感想であるということはご考慮ください。
「英文解体新書」という化け物について
「英文解体新書」は著者である北村一真氏が、あの英文解釈書の最高峰として位置づけられている「英文解釈教室」の流れを組んだ、本格的な英文解釈指南書です。
この参考書を紐解いていただければ分かりますが、最初からどこか懐かしい香りが漂っています。あ、ほんとに匂っているわけではありませんよ(笑)
そう、この参考書にはある雰囲気が香ってくるんです。どことなく「懐かしい」香りが。
この英文解体新書は、構成が極めて「英文解釈教室」にそっくりです。ですからページをぺらっとめくるとあっという間に当時の英語に燃えまくっていたあの時代に一瞬にして戻るんですよね。
もちろんこの参考書の魅力は単に構成が英文解釈教室に似ているからではありません。ぜひ一度手に取ってこの参考書をじっくり見てください。
以下では私が実際にこの参考書をやり込んで、素直に感じた感想を余すところなくご紹介したいと思います。
手に取って学習すればすべての英語学習者が幸せになる?!
いきなりで恐縮なのですが、この英文解体新書は、決して初心者に優しい仕様ではありません。
まずこの参考書はターゲットとしている英語学習者を以下のように設定しています。
…想定する読者としては、大学入試レベルの英文法、英文解釈の基礎を一通りマスターしていて、さらに力をつけ、様々なジャンルの英語の文章を独力で読み解いていけるようになりたいと考えている人です。…(中略)英語を底上げしたいと考えている方や、大学院の受験を考えている方、また場合によっては英語を強力な得点源にしたい難関大の大学生なども入ってくるかもしれません。
(英文解体新書「はじめに」より引用)
このコンセプトからもお分かりの通り、どう考えても「これから英文解釈を初めてやりますよ~」といった英語学習者には全く向かない参考書であるのはお分かり頂けると思いますし、実際歯が立ちません。
そりゃそうです。ターゲットとしている英語学習者のレベルがあまりにも違いすぎるんです。
詳しくは実際の例を元にして後述しますが、この参考書は確かに最高です。扱っている英文の質はもちろんのこと、現行の英文解釈参考書としての完成度といい文句はありません。
ただし、それは使う英語学習者のレベルによります。
決して私はみなさんの英語のレベルを過小評価しているのではありません。ですがこれだけはどうしても言いたいんです。
英語学習は段階を踏まないとあとで必ず戻ってくることになる
という点は、私がいつどんな時にも英語に触れる時に頭の中で肝に銘じていることなんです。
英語学習は階段を数ステップ一気に飛ぶ、といった学習は出来ません。仮に無理やりそういった学習をしたとしても、ある程度のレベルで頭打ちになり、必ず【ごまかした】箇所に戻ってくることになります。
つまり英語学習は一歩一歩しっかりと噛みしめて昇って行くより他に方法がないんです。
これは実際に私自身がこれまで経験してきたことであり、それゆえにこの点に関してはたとえ英語学習者とケンカになったとしても曲げない箇所なんです。
したがって今回の「英文解体新書」についてその内容うんぬんを言う前に私がまず言いたいことは「自分の英語のレベルを本気で分かったうえでのセレクトなの?」ということなのです。
例えばこの参考書の【ポイント】を見てください。例題1の箇所で構いません。
ハッキリ言いますがこの英文解体新書のポイント解説、決してやさしくないですよ?スペースの都合の問題もあるかと思いますが、その参考書の筆者は決してそういった問題でこのポイントを書いているのではないと思いますね。
この筆者は実際にこの本を手に取って読む読者の「顔」をしっかり想定しているんです。
ですからもし、各例題に設定されている【ポイント】を読んでみて、さっぱり言っていることが分からない、という人がいるのでしたら、悪いことは言いません、いったんこの参考書を離れた方が無難です。
決してあなたが悪いのではなく、筆者が想定している英語学習者像とあなたとの開きが激しすぎるんです。
この参考書には妥協がない
こんなことを書くといかにもこの参考書が説明が簡素で不親切、みたいな印象を受けるかもしれませんが決してそうではありません。
それどころかこの参考書にかかれている内容は【ポイント】にしろ例題に至るまでの解説にしろ、まさに最高峰。じっくりと噛みしめるように読んでいただければ、いかにこの著者が言葉を選んでみなさに分かりやすく伝えようとしているかが分かるかと。
そのくらい例題のポイントには文字通り【ポイント】の宝庫です。
ただ問題はそれを受け止める私を含めた読者がそれなりの器を持っているかです。
例えば以下の例題は実際にこの参考書の掲載されている英文を、私が当ブログで説明したらどのようになるかを実際に試してみたものです。
もちろんこんな失礼なことを著者である北村一真氏に黙って行うことには抵抗がありますので、無理をいって交渉したところ、快くOKしてくださいました。本当に感謝ですね。
もし手元に英文解体新書がございましたら、ぜひ実際のポイントと私の解説の違いを感じてみてください。今後の英語学習の指針になるかと思います。
英文解体新書の例題を「まこちょ英語ブログ」風に解説すると
①English is the language of science. ②That started then as something like two-thirds of the people who invented all the things that make modern society what it is did so through the medium of the English language.
then:ここでは16~17世紀を指す
(引用:英文解体新書P27 例題2より抜粋)
この英文は著者にご了承をいただきまして、「英文解体新書」の例題から抜粋させていただいたものですが、この英文をもし当ブログの読者層を念頭にして私が解説すると以下のようになります。
①の文は容易に解釈できるかと思われますので②の文より解説してみます。いつものブログ記事のような感覚でお読みください。途中のURLの内部リンクも当ブログの過去記事からの抜粋になります。
まこちょ英語ブログ風解説
「【それ】は当時(16~17世紀)に始まった」
thatは代名詞なのですが、英文中の代名詞の使い方には注意が必要です。代名詞にはitとthat、thisがありますが実はそれぞれ使い分けています。一見全部同じに見えるんですけどね(笑)
【代名詞it / that / thisの使い分け】
● it → 人称代名詞
前の文の名詞「1語」を指す
● this / that →指示代名詞
前の文「全体」を指す
したがって今回のthatが指すものは、前の文全体、すなわち「英語は科学の共通言語である(という認識)」を指していると分かるわけです。
ちなみに代名詞it / that / thisについてどっぷりと学習したい方は以下の記事が超おススメ。代名詞に敏感になると英文解釈が一段鋭くなりますよ!
続いて
as英語学習者にとっては厄介な単語でしょう。なぜなら「前置詞」と「接続詞」の両タイプがあり、後ろの形で判断していかなければならないからです。
もちろんasが前置詞ならが後ろは「目的格」の名詞、接続詞のasならば後ろはS+V…と「文」が続くことになりますが、この文は一見してas以下が長くなりそうですので、両方の線でぼんやりと読み進めていくのがおススメ。
どうしても後ろの形を見ないと判断できない場合はしょうがないですから決定打が出るまでは辛抱して読み進めましょう。
something likeはaboutと同じ意味。したがってここはabout two-thirds of the people「人々のおよそ3分の2」と言っているのと同じです。
ここでpeopleの後ろに動詞(V)が出てくればas the people(S)+(V)という形になって、asは接続詞だ!ということになるのですが、出てくるのは関係代名詞のwhoなんですよね。しかもこれ以降関係代名詞節のラッシュなんですよ(笑)
「[あらゆるものを発明した] ⇒人々」
このall the thingsにも関係代名詞節がかかるんです。
このthatがいわゆる代名詞のthatでmakeの主語でないのは明らかです。なぜってthatが単数形にもかかわらずmakeにsがついていないですからね。
ところがこのthat節ですが意外に解釈としては難しいです。特にwhat it isのところに注目してみましょう。
what S (is / am / are)は関係代名詞whatの表現の一種で「現在(今)のS」と訳します。大事なことは
【what S (is / am / are)のポイント】
⇒全体で名詞節になる
という点。ということはこのwhat節は文中で何らかの役割を持っているということになります。具体的にいうと(S / O / C / 前置詞のO)のうちのどれかになるということですね。
つまりここはmakeの後ろに名詞が2つ並んでいると。
make(V) modern society(名) [what it is](名)
代名詞itを指しているのはmodern societyですので、what節の内容は「今の(現代)社会」。そしてwhat節の前の名詞も「現代社会」。
つまりこの2つの名詞は同じ「現代社会」を指していますのでmodern society= [what it is]の関係になっているということになります。
したがってこのmakeはSVOCの第5文型を作っているとわかればokです。したがってここは「現代社会を今ある形にしているあらゆるもの」と解釈していきましょう。
be動詞のisと一般動詞のdidが接続詞もなしにくっつくなんてありえませんから、ここでwhat節が切れているのが分かります。つまりこのdidがsomething like two-thirds of the peopleの動詞(V)だったんですね。
as something like two-thirds of the people(S)… did(V) so
did soは「代動詞」用法ですがこれはどこを指しているでしょう?その時didが「過去形」で表現されているのが大きなヒントになります。
この英文did so前に過去形の動詞が出てくるのは2つしかありません。startedかinventedですね。
ですがこのdidにはsoがついていますので、このso部分まで対応しているinvented all the thingsのほうと分かるわけです。
did so
↓
invented all the things
全訳「英語は科学の共通言語です。そうなったのは当時(16~17世紀)からで、現代社会を今ある形にしているあらゆるものを発明した人々のおよそ3分の2が、英語を使ってその発明をしたという事情によるものです」
自分の英語学習の立ち位置を正確に見直す転機にしてほしい
このように、英文解体新書で著者が説明した【ポイント】と、私が解説した説明は非常に違いがあるかと思いますが、言っていることに違いはありません。
ですが読者によっては相当な違いを感じるかと思われます。しかしそれは当然といえば当然のことなんですね。
それは著者である北村一真氏と、私が想定する読者像があまりにもかけ離れているからです。
私がこのブログで徹底してぶれない読者層は「英語初心者からの脱却」です。英語に苦手意識を持っている全英語学習者を、何とか英語を自力で楽しめるまで引き上げる、というのを基本コンセプトに持っています。
それに対して北村氏のこの英文解体新書は、それなりに英語に自信のある読者をさらにブラッシュアップする、という趣旨で書かれています。仮に説明のポイントが私と瓜二つだとしてもです。
問題はそれを受け止めるあなたの現在の英語コンディションがどのあたりにいるのかによるのです。
例えば今「英文解体新書」が巷で騒がれているから、といった理由でやみくもに手に取るのは大変結構ですが、その前にしっかりと自分の英語の実力に目を向けましょう。
この偉大なる令和に生まれた英文解釈の最高峰、英文解体新書をしゃぶりつくすために、まずは己の英語力に冷静に向かいあってみましょう。
その結果「俺はイケる!」と思った方は迷うことはない、この気合の入った参考書の英語の「海」に飛び込んでみたらいかがでしょうか。
決してその場しのぎではない骨太の英文と、その英文に込めた作者の息遣いまで聞こえてくるような至極の英語を感じることができると確信しています。そしてこの英文をセレクトした筆者の熱い思いもね。
超おススメ「英文解体新書」、あなたの英語学習のキャリアに加えてみてください、損はさせませんよ!
また会いましょう。
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