この記事は
「完了不定詞(to have 過去分詞)と完了動名詞(having 過去分詞)っていったい何が違うのですか?どちらも主節の時制から一個ずれるという点では同じ使い方じゃないですか。だったらこの2つの完了形はいちいち分ける必要はないのではないでしょうか」
と、非常にマニアな質問をしてくる英語学習者に向けて記事を書いています。
● みなさんこんにちは、まこちょです。
準動詞句の中には「不定詞句」と呼ばれるものと、「動名詞句」と呼ばれるものがあります。どちらも中学生(もしかしたら小学生?)のときに学習しますので、おなじみの方も多いのではないでしょうか。
それぞれの形も独特で、不定詞句はto V、動名詞句はVingから始まる句を作ります。ちょっと軽く例文を見てみてください。まずは動名詞から。
例①
He is proud of being a famous actor.
「彼は有名な役者であることをを誇りに思う」
続いて不定詞。もはやおなじみ感が満載ですね(笑)
例②
He is said to be a teacher.
「彼は先生だと言われている」
と、動名詞句、不定詞句を使うと表現に幅がでて英文ライティングも楽しくなってきます。
しかもですね、この不定詞句・動名詞句なのですが、to have 過去分詞やhaving 過去分詞という形を使うことで、主節の時制より一個前の時制も表すことができるんです。例えば
He is proud of being a famous actor.
「彼は有名な役者であることをを誇りに思う」
↓
He is proud of having been a famous actor.
「彼は有名な役者であったことを誇りに思う」
不定詞句だって負けて(?)いませんよ。
He is said to be a teacher.
「彼は先生だと言われている」
↓
He is said to have been a teacher.
「彼は先生だったと言われている」
とこのようにhave +過去分詞という「完了形」を使うだけで、時制の違いを表すことができるのですからとても便利ですよね。
ところでここまで書いてふと疑問に思ったことがあるのですが、このto have 過去分詞の「完了不定詞」とhaving 過去分詞の「完了動名詞」なのですが、両方とも主節との時制のずれを表すという点では全く同じです。
ではこの2つの用法はいったい何が違うというのでしょうか?
実は正直この2つ、両方とも「だった」と訳すので意味的にはまったく同じに見えますが、だいぶ相手に与えるニュアンスが異なります。まったく同じかと思ったら違うんですね。
そこで今回は完了不定詞と完了動名詞の違いについて徹底解説します。ただし今回のネタは英文法の中でもかなり「上級」向けになりますのでご了承ください。
この記事を最後まで読むと、以下の点であなたの英文リーディングは著しく向上します。
ぜひ積極的に知識を吸収して、違いのわかる(?)英語リーディングマスターになってみてください。
「一見同じに見えるんだけどなぁ…英語って深いですね!」
完了不定詞と完了動名詞の違い
改めて上記の2つの例文を載せますね。
例①
He is proud of having been a famous actor.
「彼は有名な役者であったことを誇りに思う」
例②
He is said to have been a teacher.
「彼は先生だったと言われている」
ど~みてもこの2つの使い方は同じに見えるのですが、じつは以下のような違いがあるんです。
完了動名詞(having 過去分詞)⇒単純に「主節の動詞」以前を表す
例①のように完了動名詞を使った場合、それは主節の動詞の時制以前を表します。つまり私たちにとってなじみのある過去形(もしくは大過去)の訳し方でokです。
例
I am ashamed of having stolen the money.
「私はそのお金を盗んだことを恥ずかしく思っている」
例
I was very sorry for your not having come with us.
「あなたが一緒に来てくれなかったのが本当に残念だった」
こうしてみると、なんだ簡単じゃないか、思うかもしれませんが、この完了動名詞にもちょっとした注意点があるんですよね。
※注意点※
こうして完了動名詞について書くと主節の動詞「以前」のことならなんでもhaving 過去分詞にすればok!と思うかもしれませんが実は主節の動詞がある特定の種類の時には注意が必要です。
そう、それは主節動詞がremember「覚えている」やforget「忘れる」、regret「後悔する」admit「認める」などのように、間違いなく過去を暗示する語が主節動詞に来る場合は、having 過去分詞という形にしないで、ただの~ingの形で主節の1つ前の意味を表すことができるんです。
例
I remember visiting the temple before.
「以前その寺を訪れたことを覚えている」
この「having+過去分詞」になっていない~ingを「単純動名詞」といいますが、単純動名詞の形で主節の動詞「以前」の内容を表す点は以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ確認してみてください。
このように完了動名詞を使うと、単純に「過去」か「大過去(過去完了)」を表すことができるのですが、to have 過去分詞の「完了不定詞」になると若干注意が必要になります。
完了不定詞(to have 過去分詞) ⇒「未来完了」や「仮定法」を表すことがある!?
完了不定詞は完了動名詞と同じように主節動詞「以前」を表すことができるのですが、それだけでは正直足りないんですよね。
ちなみに単純不定詞と完了不定詞の違いについては以下の記事が非常におススメ!
そして完了不定詞の使い方を理解するには、もともとの不定詞と動名詞の「性格」の違いにまでさかのぼらなくてはなりません。
そもそもto不定詞と動名詞は「完了」の表現以前に以下のような特性があります。
- 動名詞(~ing)⇒ 過去志向・事実
- 不定詞(to~) ⇒ 未来志向
不定詞と動名詞の基本的な「性格」について徹底的に学習する場合は以下の記事が断然おススメ。なぜこの2つを使い分けなければならないのかが一発で分かります。
したがってto不定詞は本来主節に、「未来を暗示する動詞」と一緒に使われることがダントツに多い用法になります。例えば
例
I want to read this book.
「私はこの本を読みたい」
ですが、正確に書くとこの文は「私は、【これから本を読むこと】を望む」です。
つまりto不定詞そのものに「未来志向」のニュアンスがあるので、その後ろにhave+過去分詞をつけるとどうなりますか?
have+過去分詞は「完了形」です。つまり to have 過去分詞は
to + have 過去分詞
↓
未来+完了形
↓
未来完了形
「~し終わっている」
の意味を表すことができるのでした!
例
I want to read this book.
「私はこの本を読みたい」
↓
I want to have read this book.
「私は(これから)この本を読み終わりたい」
もちろんこのパターンはすべての完了不定詞に適用されるわけではありません。以下の条件が重なるとto have 過去分詞を「未来完了」として訳すことになります。
【to have 過去分詞を「未来完了」として訳すときの条件】
①主節の動詞が「現在形」
②主節の動詞が「未来を暗示する動詞」
※「未来を暗示する動詞」とは
- intend (expect / mean) 「~するつもりだ」
- want ( wish / hope)「~したい」
- promise 「約束する」
↓
これを踏まえて
③未来を暗示する動詞 + to不定詞の未来志向性 have +過去分詞
意味「~し終わる…だ」
例
I hope to have done my homework by tomorrow.
「明日までに宿題をやり終えたいな」
例
I mean to have called you.
「君に電話しようと思っている」
主節動詞が過去形+to have 過去分詞 ⇒ 「かなえられなかった願望」
実はこのto have 過去分詞の訳し方は他にもあるんです。
先ほどの「未来を暗示する動詞」が過去形で使われるとき、なんと「結局は叶えられなかった願望」を表すことができるんです。
意味的には「できなかったけれど、そうしたいと思っていた」と表します。
例
Bob meant to have got up at six.
「ボブは6時に起きるつもりだったができなかった」
例
She hoped to have been the president.
「彼女は社長になることを望んでいたがなれなかった」
例
She wanted to have read the book within the next week.
彼女はあと7日以内にその本を読み終えたかったができなかった」
「うーん…なかなか難しい用法ですな…」
あとがき
今回は完了動名詞と完了不定詞の違いについて解説してみました。なかなか難しいのですが、まとめると
●【完了動名詞】
⇒主節の動詞より【以前】の時制を表す
⇒主節の動詞の種類によっては~ingで以前の時制を表すことができる
●【完了不定詞】
⇒主節の動詞より【以前】の時制を表す
⇒主節の動詞が未来を暗示、かつ【現在形】なら
意味「~し終わる…だ」
⇒主節の動詞が未来を暗示、かつ【過去形】なら
意味「~するつもりだったができなかった」
非常に難しいですが、ぜひ使いこなしてみてくださいね!
また会いましょう。
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