● こんにちは、まこちょです。
関係代名詞を学習していると、例えば関係代名詞の前に前置詞がついているパターンを見たことがあるかと思います。例えば以下のような例文はよくみられますよね。
例
This is a town which I lived in three years ago.
inを関係代名詞の前に持っていって
This is a town in which I lived three years ago.
「これは3年前に私が住んでいた街だ」
この「前置詞+関係代名詞」のパターンは英語学習者が苦手としている場合が多くて、前置詞は一体何をセレクトすればいいのか?なんて悩んでしまうことが多いですよね。
ところが今回の生徒の質問はこの前置詞+関係代名詞のもっと難しいパターンです。これは最初に見るとビックリするんですよね。
「先生、この英文っていったい何ですか?何か関係代名詞の後ろのto不定詞がついているんですけど…、何か訳し方がよく分からないのですが」
と言って私に見せてくれる英文が以下のものです。
例
I have no friend with whom to talk about it.
「私にはそれについて話をする友人がいません」
この英文、よく見てみるとwith + whichの後ろに文ではなくてto do…と不定詞が続いていますよね。確かに一見「変」な英文に見えます。大学入試でもごくまれに登場する英文ですよね。
なぜ関係代名詞の後ろに不定詞to Vが続いているの?
前置詞+関係代名詞+to doの訳し方は?
この2つが英語学習者の疑問点であるようです。
そこで今回はこのいかにも変な構文を徹底解説します。確かに和訳問題でごくまれに登場する嫌な箇所ではありますからね。
ぜひマスターしていただいて、今後の英語学習にお役立てください。
なぜ前置詞+関係代名詞+to Vの形なのか
もう一度先ほどの例文を見てみましょう。それにしてもこの英文、不思議な形をしているなぁ。
例
I have no friend with whom to talk
「私は話をする友人がいません」
この英文の最大の謎はなぜ関係代名詞の後ろがto不定詞なのか?というところだと思うんですよね。
そう、初めからこう書いておけば私含め、みなさんもそれほど悩むような英文ではないはずなんです。
例①
I have no friend whom I can talk with.
この形だとよく英語参考書などで見ることができる英文ですよね。この英文からwithを前に持って行って、
I have no friend with whom I can talk.
with whomと「前置詞+関係代名詞」の形になりました。これもおなじみ(苦手な人は苦手でしょうが(笑))ですよね。
ところで、先ほどのto不定詞を使った文ですが、この部分は上のどの箇所と被っているのかをちょっとチェックしてみてください。
すると上のI canの部分が toに変わっていることが分かるかと。
I have no friend with whom I can talk.
I have no friend with whom to talk.
なぜこんなことができるのでしょうか。それにはto不定詞の性質が存分にかかわっているのでした。
to不定詞の意味上の主語
to不定詞の意味上の主語を表現する場合to不定詞の前にfor Aという形で置くのはわかりますよね。
例
It is easy for him to study Japanese.
「彼が英語を勉強するのは簡単だ」
ところが今回のwith whom to talkのto不定詞はtoの前にfor Aがありませんよね。このto talkも不定詞ですから意味上の主語は【必ず】あるはずです。
ですからもちろん偶然じゃなく、必然的にfor Aがない形にしているんです。それは、
という準動詞の意味上の主語の独特なルールがあるから書いてないだけなんです。ですから今回は
to talkの前にfor Aがない
↓
to不定詞の主語が全体の主語「I」と同じだから書いていない。
ということになります。ここで、ちょっと発想を変えてほしいのですが、今回with whom to talkと表現した以上、to talkの主語は「I」であることはしっかり分かるという点は重要ですよね。
つまりいちいちwith whom I can talkと書かなくても主語が分かる、という点でto不定詞はお手軽です。わざわざS+Vと書かなくていいのだから。
そういった意味でto不定詞を使っているというのが、前置詞+関係代名詞+to Vになっている理由の1つです。
to Vの性格
と、こんなことを書くと英語に一家言(?)を持っている受験生はある疑問がわくと思うんですよ。それはこんな感じです。
「先生、to不定詞を使うと全体の主語と同じ場合、わざわざ主語を書く必要がないのでお手軽であるのは分かるのですが、この文canまで消しちゃってますよ?なぜto不定詞の表現でここにcanのニュアンスが隠れていることがわかるのですか?」
という質問。うん、鋭いですよね。確かにこのcanの存在はどうするのだ、というのはごまかしてはいけない重要なポイントであるとは思うのですが、なに、これだってto不定詞の「ある性格」をふんだんに利用した結果こうなっているだけなのです。
remember +~ingとremember + to Vの違い
rememberは後ろに~ingとto Vの2つの句をつけることができますが、この2つの差がしっかりと分かっていれば今回の前置詞+関係代名詞の後ろにto Vを使っている理由も自ずと分かるかと。
動名詞~ingは「過去のこと・もしくは事実」を表すのに対して、to Vは「未来のこと・これから行うこと」を指すのでした。
例
I remember studying English.
「私は英語を勉強したのを覚えている」
I remember to study English.
「私はこれから英語を勉強するのを覚えている」
つまりto不定詞を使うと、to VのVは「これからやること ⇒ まだやっていないこと ⇒ 未来のこと」を表現することができるのです。
そしてここからが重要なのですが、みなさんがご存知の「助動詞」は、形こそ「現在形」ですが内容は果たして「現在」なのでしょうか?例えば以下の文章を見てください。
I must study hard.
「私は一生懸命、勉強をしなければならない」
I should study hard.
「私は一生懸命、勉強すべきだ」
I may study hard.
「私は一生懸命、勉強するかもしれない」
この英文は助動詞の部分だけを変えた単純な英文ですが、この文、助動詞が何であろうと主語である「I(私)」はまだ【勉強していない ⇒ これから勉強する】ということをしっかりと理解できていることが重要です。
そう、助動詞を使った文は必ず「未来」の意味になるんですよね。つまり同じ「未来のこと」を表すto Vと助動詞は非常に相性がよいということになります。
よく「助動詞の何でも屋」として学習するbe to V構文がなぜ不定詞を使った構文で表現するのかも納得してくれるんじゃないでしょうか。
※参考までに
● be to V構文
→ 助動詞の何でも屋。「予定=will / be going to」、「義務= must / should」、「可能=can」、「意図=will」の意味にすることができる。
例 (予定)
The field day is to be held on October 10.
= The field day is going to be held on October 10.
「運動会は10月10日に開かれることになっている」
例 (義務)
You are to finish the report by tomorrow.
=You should finish the report by tomorrow.
「明日までにレポートを終わらせておくように」
今回の前置詞+関係代名詞+to Vの形も、本来なら以下のように書くのが本当なんです。
I have no friend with whom I am to talk.
am to talkの部分はbe to V構文。主語が全体の主語と同じなので、I をカットし、
I have no friend with whom am to talk.
to不定詞で「未来」の意味を表すことができるのでamもカット。といいますかamは主語とセットで使うものですね。
I have no friend with whom to talk.
と今回のテーマの前置詞+関係代名詞+to Vの形が出来上がったわけです。
前置詞+関係代名詞を「関係副詞」一語にすることは可能か
また、今回の形でよく質問に来るパターンがあるんです。それは以下のような内容。
「先生、よく in which~なんていう「前置詞+関係代名詞」は関係副詞のwhereに書き換えることができるじゃないですか。ということは今回の不定詞を使ったパターンでも、関係副詞に書き換えることはできるのですか?」
う~ん…次から次へと(笑)。英語の質問は途切れることがありませんね。
この生徒が言っているのは以下のようなこと。
例
That is the town in which I lived last month.
= That is the town where I lived last month.
「あれは先月住んでいた街だ」
場所+in whichは関係副詞whereを使って表現することが可能です。この理屈からいったら、
He looked for a place in which to sleep.
「彼は寝る場所を探した」
のin whichの箇所をwhereに変えて
He looked for a place where to sleep.
と表現することも一見可能なように見えますよね?
ところがこの形は結論から言うとアウト。なぜかというとみなさんも一回ぐらいは見たことがある疑問詞+to Vとの勘違いを防ぐためにあるんです。
疑問詞+ to V
英語の構文には【疑問詞】の後ろにto Vをつなげて表現するものがあるんです。例えば
例
Can you tell me where to get off?
「どこで降りればいいのか教えてください」
このwhere以下を見てください。先ほどの in which to sleep のin which部分を変えた形とそっくりになるでしょう。
where to get off
where to sleep
もちろん上のwhereは【疑問詞】ですので、「【どこで】降りるべきか」と訳しています。このように一見するとまったく瓜二つとなってしまうので、誤訳を避けるために前置詞+関係代名詞 to Vの形は、関係副詞の形には直さないのがルールです。
あとがき
今回の前置詞+関係代名詞+to Vの形について、なぜto不定詞を使って表現するのかはお分かりになったでしょうか。
最後にこの構文について一言言いたいことがあるのですが、そもそも「前置詞+関係代名詞」という形は、非常にフォーマルで文章体(かなり古い)な表現であることは覚えておくと良いでしょう。
ましてやその後ろにto Vをつけて表現するなんて、かなり古臭い表現で現代英語ではほとんど見ることはありません。
ですがごくまれに大学入試や昔の英文などで見られることがある、まるで「化石」のような構文であることは、どこか頭の中に入れておいてくださいね。
また会いましょう。
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