● こんにちは、まこちょです。
英語の表現に「人にとって」という表現があるのですが、これがなかなか生徒たちを迷わす表現なようです。
よく質問に上がる「人にとって」は例えば以下のような内容が多いです。
「先生、『人にとって』は【for人】と表現するのか、それとも【to人】と表現するのかどっちですか?使い分けがちょっと難しいです!」
というもの。
なるほど、確かにこれは英作文等の表現でよくでる質問なんですね。
このto人とfor人はどちらも意味上では「人に(とって)」と訳せます。ところでこのto とforの違いとはいったい何なのでしょうか。例えば
例
He was kind to me.
「彼は私に親切だった」
例
This book is difficult for him.
「この本は彼にとって難しい」
なんて例文はよく見ます。
この2つはどのように使い分けているのでしょう?forとtoの使い分けは特に難しいですよね。しかもこれ、学校ではほとんど説明されませんので、いきおいフラストレーションがたまる箇所でもあります。
この違いは前置詞toとforのニュアンスの違いをしっかりと理解しなければいけません。
そういうわけで今回はこの前置詞のtoとforの使い方の違いについて焦点を絞って解説したいと思います。
意外に簡単だったりしますので、ぜひみなさんの英語学習にお役立てください。
to人は「人に直接的に」、for人は「人に間接的に」
例えば次の例文は何が違うのでしょうか。
例① This is important to me.
例② This is important for me.
両方の例文ともThis is important「これは大切だ」までは同じです。
important to meの場合、「私にとって【もろ】重要」とmeに直接ふりかかってくるニュアンスがあります。つまりダイレクト、言い換えると、meが「最終到達地点」なわけです。
多少おおげさに表現するなら、「私に対して【何が何でも】重要」ということです。
ところがこれがimportant for meになると、forは「間接的」なニュアンスになるんです。
つまり「私の【目標】のためには重要」と若干トーンダウン。「私には直接重要ではないのですが【私の目標】のためには重要だ」というニュアンスになります。
そこで先ほどの例文をもう一度見てみましょう。
例
He was kind to me.
「彼は私に親切だった」
これは「私に対して【直接】親切だった」のです。
例
This book is difficult for him.
「この本は彼にとって難しい」
これは「彼には難しくないのですが、彼の【目標・目的】にとっては難しい」のです。
この違いが分かるでしょうか。
つまりまとめると
● 【動作・行動】 to 人(場所・物)
⇒ 人(場所・物)に【直接】動作、行動が及ぶ。
● 【動作・行動】for人(場所・物)
⇒ 人(場所・物)の目的・利益のために【間接】的に行動、動作が及ぶ。
ということになります。
to A とfor A の違いを図で考えてみよう
なぜtoとforではこれほど違うのでしょうか。ちょっと図で考えてみましょう。
矢印の長さがポイントです。
こうしてみるとto A は間違いなく最終目的地 Aに「到達」します。ところがfor AはAの「方」には進みますがAに「到達」するとは限りません。あくまでもAの方向に向かっているだけなのです。
例えばこの違いを如実に表している表現があります。
例
He went to Kyoto.
「彼は京都に行った」
この場合、toを使っていますので「京都に必ずつく」というニュアンスが発生しています。ところが、
例
He left for Kyoto.
彼は京都に向けて出発した」
これは?
確かに彼は京都に向けて出発しました。ですがそれは「出発した」だけで、必ず京都に着くというわけではありません。あくまでも「京都の方に行った」なのです。もしかしたら京都につくまでに彼は「途中下車」してしまうかもしれません。
電車の表示がfor 水戸/ to水戸の理由は?
そうすると例えば「水戸行きの電車」に乗るとなぜ「To水戸」ではなく「For水戸」と表示されるのか、その理由も分かると思います。
例
This train bound for Mito.
「この電車は水戸行きです」
この場合、この電車は「水戸方面」には行きますが、【直接】行くとは限りません。この前置詞の使い分けによって、この電車は「水戸の方向に進みますが到着するとは限りません(最終地点ではありません)」と私たちへ暗にメッセージとして送っているのです。
よくバスや電車の「~行き」の表記にforを使ったりするのは、その電車を利用している乗客が水戸方面行きの電車を利用しているだけで、必ずしも乗客全員が水戸を最終目的地にしているわけではないからです。もしかしたら途中の駅で降りる乗客もいるかもしれませんからね。
ところがこれがtoを使うと「方向」だけではなく「到達」までしっかりとニュアンスに入ることになります。
例
This train is going to Mito.
「この電車は水戸に行きます」
こうなると、この電車は直接水戸に行くことを表します。つまり「水戸直行便」。途中下車なんかとんでもありません。しかしtoとforの違いだけで、ずいぶんニュアンスが変わるものですね。
giveの時にはtoを使うがbuyの時にはforを使う理由
このtoとforの性質の違いは第4文型SVOOからSVOの第3文型に書き換える時にも影響を及ぼします。例えば
I teach children English.
「私たちは子供たちに英語を教える」
という表現がありますが、それを第3文型SVOに書き換えると
I teach English to children
となります。この時toを使う理由は、「英語を教える」のは子供たちに【直接】教えるのでtoを使っているんです。
子供たちが目の前にいないと英語を教えることが成り立ちません。
ところが次の文はどうでしょう。
I bought him a present.
「私は彼にプレゼントを買った」
この文をSVOの第3文型に書き換えると
I bought a present for him.
とtoではなくforなんですよね。
それは「私がプレゼントを買う」のに「彼」は直接影響を与えないからです。
極端な話、「彼」が目の前にいなくてもプレゼントは買えますからforを使っているんですね。
● 前置詞toとよく使う動詞
tell (話す)lend(貸す)pass(手渡す)send(送る)hand(手渡す)give(与える)show(見せる)teach(教える)など
例
She passed the letter to us.
「彼女は私たちにその手紙を手渡した」
→ 「私たち(us)」が彼女の目の前にいなかったら、彼女は手紙を渡すことができませんよね。
例
He lent this book to her.
「彼は彼女にこの本を貸した」
→ これも、彼女が目の前にいなかったら本を貸すことなんかできませんよね。誰もいない空間に本を差し出しても、周りの人たちが怪訝そうな顔を浮かべるだけです(笑)
● 前置詞forとよく使う動詞
buy (買う)make(作る)find(見つける)get (得る)sing(歌う)choose(選ぶ)cook(料理する)leave(残す)など
例
My mother made these cookies for him.
「私の母は彼にこちらクッキーを作ってあげた」
→ 別にこの場合は、たとえ彼が私の母の目の前にいなかったとしてもクッキー自体は作れます。むしろ砂糖と間違って塩を入れてしまってもバレないので、目の前にいない方がいいかも?(笑)
第4文型についてはこちらの記事をどうぞ
まとめ
さて今回はいかがだったでしょうか。このforとtoの使い方ですが、なかなか難しいです。ですがこういったニュアンスが分かるようになると英語の理解がワンランク上がると思いますので、ぜひ会得してみてくださいね!
toとforのまとめ
to A ⇒ Aが「到達点(最終目的)」
for A ⇒ Aは「目的」ですが「到達地点」ではない
ではまた
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