● みなさんこんにちは、まこちょです。
みなさんは、学校の英語の授業で「受動態」について学習されたかと思います。
能動態から受動態への「書き換え」問題なんか、よくありますよね。例えば、
「彼らはこの本が好きだ」ですが、能動態で表現すると、
例① They like this book.
「彼らはこの本が好きだ」
ですが、これを受動態にすると
例② This book is liked by them.
「この本は(彼らによって)好かれている」
と表現することができます。
能動態の目的語(O)を主語にし、また能動態の主語(S)をbyをつけて後ろに持っていく、このへんは特に難しい手順も必要ありません。
ところがこの能動態と受動態に関して、よく生徒から質問がくるんですよ。それは以下のようなもの。
「能動態と受動態はそもそも【同じ】意味なのに、どうして受動態などというものがあるんですか?」
これね、もっともな意見だと思います。だれでも1回くらいは思いませんか?
確かに「AがBをする」を、「BがAによってされる」と変えたところで意味は同じですから、このような疑問がでても致し方がないと思います。
では「意味が同じなのに、なぜ「態」の変換というものがあるのか?」ということになりますよね。
もちろん明確な違いがあるから、「能動態」「受動態」があるわけです。
そこで今回は「なぜ受動態というものがあるのか?」をテーマにみなさんと学習したいと思います。
ともすれば機械的な作業になりがちなこの「態」の変換、その意図をしっかりつかんで理解を深めてみようじゃないですか!
受動態が最も相手に伝えたい「箇所」とは?
英語は「語順」によって相手に伝えたい箇所を強調することができます。
一般的に英文は
【相手のよく知っていること(旧情報)】⇒【よく知らないこと(新情報)】
に流れていくのがルールです。つまり一番みなさんに知ってもらいたい「新情報」は文末になるわけです。
みなさんも友達と会話している時は、まずはお互いに知っていることから始まり、知らないトピックに会話が流れていくものなのですね。
このような流れを「情報構造」といって、以前別の記事でご紹介させていただきました。
参考までに
www.makocho0828.net
例えば次の例を見てください。
例 Tom broke the window.
「トムはその窓を壊した」
簡単な「能動態」の文ですね。
この文は見れば分かりますがbreakという動詞を中心に名詞がTomとthe window、2つ並んでいます。
ところでこの英文を書いた書き手はこの文の【どこ】を強調したいのでしょう?
そこで先ほどの英語の「情報の伝え方」が活きるんです。この文が一番伝えたいのはもちろん「文末」、つまりthe windowなんですね。
またここにでてくるTomは「話し手」「聞き手」ともどもよく知っている「顔見知り」ということもできます。
ところがこれを「受動態」にすると状況が一変することに気づくでしょうか。
The window was broken by Tom.
「その窓を壊したのはトムだ」
Tomとthe windowが入れ替わって受動態になりましたが、これでこの英文を書いた人が一番【強調したい内容】はby以下になったのです。つまり
「その窓を壊したのは【他の誰でもない】Tomなのだ」
と言っているんです。
そうすると次のような英作文を書くときに、どちらがより相手にスムーズに伝わりやすいか分かるというものです。
例 「あの窓をみて!トムが壊したのよ」
▲ ① Look at that window! Tom broke it.
○ ② Look at that window! It was broken by Tom.
①の文は最初の文でthe windowが新情報として【強調】されていますよね。
最初の文ですでに「新情報」としてthe windowが紹介されているわけですから、次の文ではthe windowは「既知情報(旧情報)」のはずです。
ところが①の文はまた文末にもう情報としては古いit=the windowを置いてしまっているんです。いけませんね。
それに対して②の文は後ろの文が「受動態」で態を変えていますよね。これによってIt=the windowはそれほど強調したくないポジションに移動され、新たな情報by Tomを「文末」に置くことに成功しています。
つまり
Look at that window! It was broken by Tom.
と新しい情報(赤い箇所ね)が常に「文末に」置かれているこの文が一番読者に伝わりやすい文ということになるんです。
能動態から受動態に変えることによってこのような情報の流れが変えられるということをまず覚えておきましょう。
受動態は「行為者」を【ぼやかす】働きがある
例えば次の例文はどうでしょう。
例 You made some mistakes.
「君はいくつかの間違いをしたね」
「能動態」ですね。どこにでもあるような文です。
この文って主語が「あなた」といきなり言ってしまっていますね。みなさんだったらどうですか?相手にこんな風に直接言われたら「戸惑ってしまう」のではないでしょうか。
ところがこの文を「受動態」にしてみましょう。すると
例 Some mistakes were made by you.
とすることができますよね。もちろん同じ意味です。
ところで受動態はby以下を省略することが可能でしたね。by以下がない受動態はよく見られる、というかむしろその方が多いんです。
例 Some mistakes were made.
「いくつかの間違いがあった」
この文では「あなた」がなくなりましたので、結果的に【直接相手を非難する】のを避けることに成功しています。
そう、「受動態」にするとby~の部分を「省く」ことができますので、行為者をいいたくない時に良いのです。能動態より内容を「ぼやかす・マイルドにする」ことができるのです。
⇒ 行為者をぼやかすことが可能
受動態でbyを残すときは?
例えば次の文を「受動態」にしてみましょう。
例①
He entered the shop.
「彼はその店に入った」
もちろん受動態の形は
The shop was entered by him.
と機械的に処理すればこうですよね。非常に簡単なはずです。
ところがこのby himは現実的には「省略」されることが多いですね。つまり、
The shop was entered.
と処理されることが多い。
といいますか、そもそもこの文は「受動態」にする必要があるのか疑問です。
ですが次の場合はどうでしょう。
例②
Thieves entered the shop.
「泥棒たちはその店に入ってきた」
受動態は
The shop was entered by thieves.
でこの場合はby thievesの箇所は省略されません。この違いとはいったい何でしょうか?
実はby以下が受動態の主語(S)に影響を与える場合にはby以下は省略してはいけません。
例①の場合、heが入ることによってshopに影響が及ぶということはありません。したがってby以下は「省略」した方が自然な文なのですが、例②の場合thieves「泥棒たち」が入ればshopに多大な影響を及ぼすことは間違いありません。
したがってby以下は「省略」できないのです。
例
America was discovered by Colombus in 1492.
「アメリカが発見されたのは1492年コロンブスによってであった」
Colombusがその後のアメリカに多大な影響を与えたのは周知の事実。したがってby以下は省略されていないのです。
つまり、受動態にするということはby以下が主語に影響を与える「新情報」のときにしか「受動態」にしてはいけないということになります。
by以下に修飾語句がついたとき
またby以下に修飾語句がついた場合も「新情報」なので、by以下は当然ながら残すことになります。
なぜ修飾語句がつくと「新情報」なのかというと、「新しい情報」なので決定的に情報量が【不足】しているので、修飾語句等をつけて付加情報をつけているわけです。
例
The door was broken by the thieves who broke into the house.
「そのドアは家に押し入ってきた泥棒たちによって破壊された」
まとめると
② by以下に修飾語句がついた場合
まとめ
さて今回はいかがだったでしょうか。「能動態」←→「受動態」の書き換えをただ機械的にとらえているとこの辺のニュアンスは捉えきれないと思いますのでぜひ身につけてみてくださいね。
ではまた
受動態についての学習方法が分からない人は以下の記事を読んでみてください。効率よく受動態をマスターできます。
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